美術の起源は、ラスコーやアルタミラの洞窟などに描かれた
太古の壁画であると美術史ではよく指摘されます。
実は、その同時期にいまの私たちの脳の構造も
出来上がったと言われています。
つまり、絵を描くことは現人類の誕生とともに発生したものであり、
それは本能と言っても過言ではないでしょう。
脳の構造と絵を描くことやモノを作ったりする行為は
とても密接に関わっているのです。
そして、人類は生きるための食料などを確保するため、
外敵から身を守るため、
豊かに暮らすため、
自らの人生を充実させるために、
さまざまな創意工夫を繰り返してきました。
そうした行為を広く「創造(クリエイティブ)」と呼びます。
「創造」とか「クリエイティブ」というと、
何か特別な才能が必要に見えるかもしれませんが、
それは違います。
これは誰にでも備わった能力ですし、特に絵や美術に関わらなくても
古来から人類がよりよく生きていくためにやってきたことなんです。
あえて言えば、そうやって創造してきた結果、
美術という分野が生まれたのです。
だから、たとえ一見、創造とは無縁と思える仕事をしていたとしても、
どんな分野でも創造がいらないということはないのです。
ただ、そのなかでも絵を描くことというのは
「創造」のもっともシンプルな発揮の仕方なんです。
絵を描くこと=創造なんです。
だから、とても極端な言い方をすれば、
ただ絵を楽しく描いているだけで、
その人はクリエイティブになれてしまうのです。
心に触れた光景、
深く刻まれた記憶像、
あるいは常に心に抱いている漠然としたイメージなど
は、創造のための大切な手がかりです。
頭の中で思い浮かべるだけでなく、
躊躇せずに描き表 してみましょう。
自由に数多く描き出すことによって、
漠然としていたイメージが徐々に明確になってきます。
自分が何をしたいのかどう表現したいの か、
その確信がきっと見えてくるでしょう。
こうした自分の創造が絵や作品に結実したときは
まさに生きる喜びでしょう。
そして、趣味であれなんであれ、
時間のあるときに少しでも絵を描いていると、
日常の生活や仕事のなかでも
気づきや創造力が効能として現れてくるのです。
もちろん癒しも得られます。
もしかすると長生きにも関係するかもしれません。
それは心にあるまだ見えないものを
見えるようにするからなんでしょう。
絵を描くことは見ることと深く関わります。
だから正しく見ることができるようにもなります。
正しく見ることができるということは、
それだけで気づきに満ちた日々を
生きることにもつながるでしょう。